ゴスペルのイブ【後編】|株式会社渋谷不動産エージェント
ゴスペルのイブ【後編】2021-12-24
暗い道を走り続けるメアリーに冷たい風と雪が襲う。
プレゼント交換によって神に祝福されない愛を彼女は悟り、
そして、祈った。
「神様、どうかお許しください。
もう二度と誰かを愛そうなどと、考えない。
そう誓ったはずなのに、
チャールズを愛さずにはいられませんでした。
私は彼の前から消え去ります。
ですから彼に罰を与えないでください。
そしてチャールズに祝福を。」
何度も何度も繰り返し祈り続ける彼女の手は
凍えながらもツゲの櫛を握りしめていた。
遠くではゴスペルの歌声が響き、
彼女の心を導いていった。
そうして、クリスマスイブにメアリーとはぐれた僕は、
毎日の様に彼女を探し、毎週金曜には教会へ通ったが
彼女に会うことは二度となかった。
ギターを失った僕は
メアリーに代わって子供達に算数と文字を教えながら
歌を唄う事で寂しさを紛らわせる他なかった。
そんな毎日を送り、季節が一巡りした頃、
僕の前に一人の女性が現れた。
「貴方がチャールズね、メアリーに固く口留めをされていたけれど、
どうしても真実を伝えたくてここに来ました。」
そう告げられた時、彼女が職安で励まされていた
メアリーの友人である事に気が付いた。
彼女の語るところ、
メアリーは僕と離れた後も、僕が幸せになる事だけを祈り
この春、24歳の若さで他界したのだそうだ。
白血病であった彼女は、いくら髪が抜け落ちようとも、
大切にしている櫛を使う事をやめなかったという。
そして最期には櫛を握りしめたまま、僕の名前を叫んで逝ったのそうだ。
語り続ける彼女の目には涙が浮かんでいた。
僕はメアリーに代わって目の前の彼女を励ますことにした。
そう、僕が初めてメアリーと出会ったときの様に。
遠くに教会からゴスペルの唄声が聞こえていた………。
THE END
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ページ作成日 2021-12-24
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